「どうして?」の嵐【貞子DX(2022)/邦画】

池内博之くんが好きなので見てきました!

 

movies.kadokawa.co.jp

 

公式サイト。意味分かんないですね。

予告編も見たのですが「池内くんが躍動しているな…」ということしか伝わってこなくて。『IQ200の天才が挑む呪いの方程式』っていう惹句も謎でしかなくて。確認してきました。

 

以下、ネタバレも含みつつ。

 

まず前提として私は邦画ホラーをほとんど見てません。『リング』も子どもの頃に一回見たっきりです。だって怖いから。でも『山村貞子』という女性のことは知っているんですよね。なぜなのか。ひどい人生を送った人だということも知っているし、そりゃ世の中を呪いたくなるよね…みたいな感想も抱いています。

 

で。今回の『貞子DX』。子どもの頃の『リング』ぶりの山村貞子さんです。1時間40分というコンパクトな上映時間の作品でした。ふつうに楽しめました。でも、映画館を出る時に一緒に見た人と言い合いました。「これ、貞子じゃなくて良かったよね?」「うん。貞子である必要はなかった」。なんなんだよ。

 

呪いのVHSが令和の世に蘇り、変死者が続出、その謎に挑むのは小芝風花さん演じるIQ200の天才大学院生&川村壱馬さん演じる自称占い王子のへっぽこハンサム──というお話だったのですが。いや。もう全然山村貞子さんである必要ない。白い服を着た髪の長い人間を全部『山村貞子さん』として出すのはやめろ。本当にやめなさい。山村貞子さんに謝れ! ばか! ちゃんとしろ! みたいな感じでした。

 

ホラーとしてはたぶん本当にダメです。笑っちゃう。山村貞子さんはそんな動きしないだろ。あと台詞が全部ギャグ。後半は特に振り切れてて、ああもう笑わせにきている……って気持ちでゲラゲラ笑いながら見てました。木村監督、『リング』見てないでしょ!? なんか雰囲気で撮ってるでしょ!!?? 『リング』シリーズが好きな方や、山村貞子さんに対してきちんと向き合っているホラーが好きな方には本当に怒られるやつだと思いました。

 

ただ、良かったなーと思う演出もそれなりにあって。

『占い王子』を自称するへっぽこハンサムは本当にへっぽこで何もできない男なんですけど、主人公に命を救われたことで呪いの解明を手伝いたい! 力になりたい! ってぐいぐい来るようになるんですね。でその時の主人公とのやり取りで、主人公(女性)のことを「王子様みたいだった」「俺はお姫様の気持ちだった」みたいなことを言うんですが、ああ、現代だ…男の子が女の子を救って無条件に恋に落ちるような世界観じゃない…(実際ふたりは恋に落ちない)…ってニコニコできてとても好きでした。

 

それから黒羽麻璃央さん扮する謎のツイ廃が主人公に何かと情報をくれたり協力してくれたりするんですけど、彼は十年自室から出ずに生きてきた引きこもりで、情報はくれるけどリアルの世界では手を貸してくれなくて。でも主人公たちの言葉でなんと呪い渦巻く現地(なんなんだよ現地って…ナンバープレートが富士山のタクシーで辿り着く現地…)まで助けにきてくれたり、映画のラストでは彼自身の人生観も変わったりして。

 

一方池内博之くん扮する人気霊媒師はもう、本当に前時代の燃え滓みたいなキャラ設定で来るからこう…推しだけど全然擁護できないな…フフッ…見た目はすごくいいのに…と心の中でろくろを回しながら見ていました。つまりこの映画は、前時代のどうしようもない人間がばら撒いた呪いをエゴの塊のような若者たち(IQ200も王子もツイ廃も初登場時点では正直結構好きになれないキャラとして描かれていたので)がお互いを思い合って、歩み寄って、手を取り合って完全解決は無理でも手探りで妥協点を、生き抜くための未来を探す、そういうお話だったのではないかと──

 

そう思うと、

完全に山村貞子さんじゃなくていいんですよね!!!!!!!

 

山村貞子さんではなく新しい呪いを描けばもうちょっとホラーとして成立したのでは? とも思うのですけど、山村貞子さんはネームバリューがすごいから「これまでのあらすじ」をやらなくて良いんですよね…だからどうしても出てきてほしかったんだろうな、山村貞子さんに…結果「貞子さんを出す必要は全然ないちょっとホラーっぽいノリの全体的には元気いっぱいなバカ映画」になってしまったんですけど…。

 

私はわりと嫌いじゃない作品でした。100分飽きずに見れたし。オチも無理やりだけど嫌いじゃない。呪いと共存し、汝隣人を愛せよ、みたいなラスト、良かったです。ほっこりした。あと池内くん扮する霊媒師の衣装や所作がいちいちセクシーで良かったです。

 

しかし本当に山村貞子さんにはお疲れ様ですと言いたい。なんかもう…ねえ…。