あの頃渋谷で見ていたような。【グッバイ・クルエル・ワールド(2022)/邦画】

2022年9月9日に見ました。公開初日ですね。

ふせったーに感想を伏せていて、伏せるだけだとなんとなく勿体無い気がしたのでサルベージします。ネタバレしてます。

 

happinet-phantom.com

 

公式サイト。

以下、ふせったーから回収した文章。

 

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・オープニングですぐに「あっこれはかつての日本映画へのラブレターのような作品だな」と感じた。


大森立嗣監督は今年52歳で邦画黄金期というか90年代〜00年代の所謂インディー映画が躍動していた時代に存在はしているんですけど、デビューは2005年だから実際にあの時代に作品を発表してはいないんですよね。でまあ実際デビューしてからは割と規模の大きい作品を手掛けがちというか、才能がすごいからそうなっちゃったんだろうけど、『ああいう』映画を撮ってない立嗣監督だからこそ…改めて自分の手でやりたかったんじゃないかな、と…。(デビュー作『ゲルマニウムの夜』は『ああいう』映画の一端ではあるけど、荒戸さんパワーとかもあって立嗣監督ソロでの作品ではないような気がするので)

 

・序盤の女性蔑視台詞と過剰な女性への暴力行為

 

こはちょっとゲッとなって終始この調子で行くなら無理やな…と思ってたけどちゃんと回収されていて、2022年の作品だ!!と思えて良かったです。玉城ティナさん扮する役に暴言を吐いたり暴力を振るったりする斎藤工扮する役が、かなり早めにきちんとティナさん(&氷魚くん)に始末されるんですよね。めっちゃいい。90年代や00年代の女たちにはできなかったことを映像でちゃんとやってくれてる。安心しました。
また、斎藤工という俳優は映画好き俳優というイメージがあり、立嗣監督がモチーフにしたであろう黄金期邦画もきっと通っているだろうから、自分の役の理不尽さやかなり早めに命を落とすダサい悪役であることを理解して演じてるんだろうな〜さすがだぜたくみ〜ってこれはもう完全に贔屓丸出しなんですが、とにかくたくみが死んだ時に「きちんと報いを受けてる!」とニコニコできて良かったです。

 

・主演俳優西島秀俊


いやこれは…私の好みの問題もあるけど、西島さんって演技下手じゃないですか…? それでもアミール・ナデリ監督の『CUT』という名作に出演した実績はあるんですけど、同時期に撮られた伊勢谷友介監督の『セイジ〜陸の魚〜』ではマジのクソ演技なんですよね。セイジは作品そのものもクソなんですけど(余談)。なのでこの人を使う時には監督の力量がすごく出るなと常々思っていて。で今回の西島さんは主演というかなんというか、群像劇の真ん中にいるので一応主演ということになってはいるけど主人公じゃないなって思って。なのでいつもの棒読み演技でも特にストレスは感じなかったです。特に印象にも残らなかったけど。ていうか『引退しためっちゃ怖いヤクザ』って設定あんまり活きてなかったですよね!? なんだったの????

 

・ホモソ要素が見当たらない


これすごい面白かった。黄金期邦画を参考にしたら絶対男と男のサムシングが出てくるじゃないですか。ないんですよ。すごい。徹底してない。強いていうなら鶴見辰吾さん扮するヤクザと大森南朋さん扮する汚職刑事のあいだにある関係がそれに近いのかなと思うんだけど、ない。で、その代わりに光っているのが玉城ティナさんと宮沢氷魚さんの関係なんですよね。恋愛、共犯、共感、愛情、信頼、友情、その全部を男女のあいだに成立させてる。サイコー。2022年です。

 

・めちゃくちゃスローテンポに進む物語


予告編のあのものすごい勢いはなんだったのだ…と思うぐらい展開がゆっくり。ヤクザのカネを奪ったメンバーがお互いに全然興味がないから、強奪後のそれぞれの人生をバラバラに描くしかないっていう…ここも2022年って感じだなー。結局最後までお互いを信じていたのはティナ&氷魚ペア(氷魚くんは強奪に参加してない)で、穏便に終わりそうだった西島&三浦ペアは破滅して終わるっていう…。90年代だったら男女破滅、男男ハピエンが定番だったような気がするので。気がするだけですが。

 

三浦友和鶴見辰吾奥田瑛二


あの時代と21世紀を結ぶ俳優陣。こういう題材の作品ならもっとこう……あの人もこの人も出てくるのでは!? となりそうなところをシンプルにこの三人に任せていて見やすかったです。

 

大森南朋


お兄ちゃんa.k.a.監督からの贔屓がすごかったです。悪くて薄汚れていてしょぼくれていて光の当たらない道を背中を丸めて歩いているキャラなのに、信じられないぐらい可憐でした。あんな潤んだ瞳の上目遣いを────────なぜ?

 

・ラストシーン


パンフに正解が書かれてて笑った。

 

そんな感じかなー。こうやって書き出してみると結構楽しんでますね。おもろかったです。また時々こういう映画が作られるようになるといいな、日本映画界!