ここは魔の土地、ちぎり通り商店街【禁猟区/柿喰う客(2022)】

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今年の観劇納めとなりました。

名前だけはずっと知ってた集団、柿喰う客。なかなかタイミングが合わなくて見に行くことができなかったのですが、今回は偶然日にちも時間もばっちり合うチケットを押さえることができて、年の瀬の下北沢に元気に遊びに行ってきました。12月27日14時開演の公演です。古本屋さんの役を中屋敷さんが演じていた回ですね。

 

まず本多劇場に足を踏み入れて驚いたのが、とんでもないお祭り感…! 柿喰う客っていつもこうなの? と首を傾げつつ、開演前におみくじ引いたり、商店街の並びを確認したりとワクワク。座席もいつ確保したのか記憶にない程度にはなんとなく押さえた割に見やすい席で良かったです! 本多劇場はどの席でも見やすいのが売りだと思うのですが、今回みたいにキャストが多い&ほぼ全員初めましての俳優さん、という状況だと、やっぱり前の方の席だとありがたいので。

 

上演時間75分という短さにびっくり。75分で何を見せてくれるのだろうという期待。演劇、長ければいいというものでもないけど、短くても戸惑いませんか? 私は戸惑います…。

 

そして開演! 台詞! 怒濤の台詞!! そしてめちゃくちゃ動く俳優陣!!!!

実はこの時点で振り落とされそうでした。なぜなら台詞を半分も聞き取れなくて……戯曲がうまいなぁと思ったのはキメのところはきちっと言ってくれるので「あ、これ重要な情報なんだな!」っていうのは分かるんですけど、それ以外の台詞をすごい早口で捲し立ててくるので「ついていけない…何もわからない…キャラクターの名前さえ…」って一瞬絶望してしまって…でもキャラクターの名前など些事でしたね! 話が進み始めるともう!!

 

どの俳優さんもとにかく濃くってすごいな…濃厚…と思いつつ、この物語は一体どこに着地するんだ? と疑問を抱き始めた後半戦の情報量と勢いといったらなかったです。これはネタバレになるのかどうか分からないんですが、舞台上に本当に何もないんですよね。空の舞台の上に立つ俳優たちが、言葉と動きだけで今そこで起きている惨劇を表現するという演劇ならではのめちゃくちゃ贅沢な瞬間を呼吸もまばたきもするなと言わんばかりの勢いで浴びせられて、すべてが終わる頃にはこちらの息切れもすごかったです。全然ハッピーエンドじゃないのも良い…あんな商店街嫌だ嫌すぎる…。

 

個人的には唯一顔と名前が一致する俳優さんことマスター牧田哲也さんの演技を見ることができてとても嬉しかったです。お顔立ちも舞台上での佇まいも全部好みだったんですが、何より声がよく響いて聞こえやすくて安心感ありました。あとは雀荘北村まりこさんと凄腕マッサージ福井夏さん、それに噂の女・永田紗茅さんが好きでした〜。牧田さんのことも映像作品で見たことがあるだけだったので舞台で見ると印象全然違ったし、俳優さんひとりひとりの名前を挙げると大変なことになるのでここまでとさせていただきますが、柿喰う客の俳優さん、客演先まで追いかけたい人ばかり! と年末にほんとにハッピーな気持ちになりました。楽しかったなぁ。

 

アフタートーク中屋敷さんが映画『来る』の名前を出していて、なるほどな〜!の顔になりました。映像版『来る』、監督のハラスメント問題をどうしても思い出してしまってぐぬ…となるんですが、私も好きな作品ではあるんですよね…そして色々な方向に影響を与える作品であるのは事実、分かる…。

 

今年は色々な舞台を見たり見なかったりと忙しい一年だったのですが、来年はもう少し計画的に、でも柿喰う客はかーなり最優先でいきたいな! と思いました。見に行って良かったです。2023年も良い舞台にたくさん巡り会えますように!